会長挨拶
第88回日本皮膚科学会東京支部学術大会
会長 石黒 直子(東京女子医科大学 皮膚科学分野 教授・基幹分野長)
この度、2024年11月16日(土)、17日(日)、新宿の京王プラザホテルにて、テーマに「みえないものをみる―想像を超えた皮膚を取り巻く世界へ&未来へ―」を掲げ、東京支部学術大会を東京女子医科大学皮膚科が開催させて頂くことになりました。本学が東京支部を担当させて頂きますのは、第27回の故中村敏郎先生、第51回の故肥田野 信先生、第86回の附属足立医療センターの田中 勝先生に次いで4回目となります。このような機会を与えて頂きましたこと、関係者の皆さまに心より感謝申し上げます。
今回のテーマに私が込めました意味は3つございます。1つ目の「みえないものをみる」は、日頃よくみている皮膚症状のみえないものとなります。皮膚の症状は大変よくみえる位置にあり、日々その症状を確認して診察をしておりますが、同じようにみえても実際には多くの鑑別診断があり、それを正確に診断できるか、診断するために的確にプランを立てることができるかが皮膚科医の醍醐味となります。AIの急速な進歩の中でも最後の判断は我々皮膚科医が下したいという意味を込めております。2つ目の「みえないものをみる」は、皮膚疾患の病態、病因に関わるみえないものとなります。皮膚疾患を発症することに関わるミクロの世界、例えば近年の次世代シークエンサーにより網羅的で高速な解析が可能となった細菌叢などと皮膚疾患との関連性についてクローズアップしたいという意味を込めております。3つ目の「みえないものをみる」は、今はみえない未来についてとなります。10年前は常識であったことが現在は常識ではないということは往々にしてあるものです。本学会で皮膚疾患診療における未来像のご提言をして頂きたいという意味を込めております。
今回は日本で唯一であり、世界でも数少ない女子医科大学である本学が担当させて頂くことを意識し、シンポジウムでは「女性リーダー育成への取り組みと未来」を取り上げ、招待講演として、「女性の品格」の著者でもある昭和女子大学の坂東眞理子総長をお招きして、「女性医師が社会から期待されること」をご講演頂きます。それに対し、もう1つの招待講演では、順天堂大学大学院医学研究科病院管理学の小林弘幸先生に医師全体に今後必要とされる「健康から学ぶ医療におけるマネジメント」をご講演頂きます。そして、2024年4月からは、法改正の下、新しい医師の働き方が開始されています。「皮膚科医師の働き方の未来」のシンポジウムでは、国の施策の他、各大学での取り組み、学生へのアプローチなどについてご講演頂きます。その他、血管炎や顔面の皮膚炎などにおけるマイクロバイオームの関与、近年潮流の変化がみられる感染症の世界、疾患の多様性の解明が大きく進んだ皮膚筋炎の世界、その功罪が明らかになってきた近赤外線の世界をシンポジウムで取り上げます。会長企画特別教育講演としては、最近問題となっているトコジラミを含めた虫の世界について、兵庫医科大学の夏秋 優先生に、我々の診療に欠かせない存在となったダーモスコピーの世界を田中 勝先生にあらためて解説頂きます。
その他、特別講演、教育講演を含め多くの企画を致しました。東京支部のみならず全国のできるだけ多くの皆さまにご参加頂きまして、さらには皮膚科の将来を担う若い世代の皆さまにもお集まりいただき、大いに「みえないものをみる」の議論を活発に行えることを楽しみにしております。
令和6年4月吉日